ひこにゃん その1。

日本列島が寒気に包まれた、12月半ばの週末。
彦根城近辺は雨交じりの雪。

天候が悪い日、彼のお方は博物館内にお目見えになるとの情報を得ていた我々は、館内にてその時を待つ。受付にてさらに詳細を確認。準備万端。


「10時半からのひこにゃんをご覧の方はこちらの部屋にお入りくださ〜い」
係りのお兄さんの声に従い、博物館の入り口近くの部屋へ。

カーペット敷きの床には、すでに10名以上が座って最前列を形作っている。
2列目に陣取った我々は、正面に置かれたホワイトボードを見上げ、その時を待った。

10:30〜11:00。30分間。
…30分間?
屋外なら、歩いているだけで時間は経つだろう。
しかし、この部屋の中で30分、何をするんだ?
気づけば部屋はカメラ片手の見物客でぎっしり。
私はなんだかわからない緊張感に包まれていたのだった。


つづく。